「完璧じゃなくていい」から生まれた、自由のグルーヴ
韓国のガールズグループ LE SSERAFIM(ル・セラフィム)が、2025年10月に発表した新曲「SPAGHETTI (feat. J-Hope)」は、グループの音楽的進化を象徴する一曲です。
BTSのJ-Hopeが参加したことで話題を集めましたが、それ以上に注目すべきは、LE SSERAFIMが“自己表現の自由”を音とビジュアルで完全に体現したこと。
本作は、彼女たちの持つ「強さ」「ユーモア」「個性」を“料理”というモチーフで味わう、まさに五感で楽しむポップアートです。
1. 「食べる」というテーマに込められた哲学
タイトル「SPAGHETTI」は単なる食べ物ではなく、生き方の比喩です。
ミュージックビデオでは、巨大なテーブルやパスタの山、トマトソースが飛び散るキッチンが登場します。
その光景は混沌としていて、時に笑えるほど奇抜ですが、実は「どんなに散らかっても自分らしく生きる」というメッセージが込められています。
I’m not perfect, but that’s my flavor.
完璧じゃなくても、それが私の味。
この一節が、LE SSERAFIMのアイデンティティを象徴します。
彼女たちは常に“強い女性像”を提示してきましたが、この曲では強さの中の遊び心を前面に出しているのです。
2. サウンド構成:ファンクポップ+実験的グルーヴ
「SPAGHETTI」は、ファンク、ヒップホップ、オルタナティブポップの要素を融合したジャンルミックス。
J-Hopeのラップが加わることで、曲全体に“スパイス”が効いています。
• ベースライン:グルーヴィーで軽快、まるで跳ねるようなスパゲッティのリズム
• ドラム:生音と電子ビートのハイブリッド
• サビ:中毒性のあるリフレイン「Spaghetti, eat it up!」がリスナーの耳に焼き付く
この“軽やかさと重みの共存”が、LE SSERAFIM特有の音楽的バランスを生み出しています。

3. J-Hopeとの化学反応
BTSのJ-Hopeは「希望(Hope)」という名の通り、明るくポジティブなエネルギーを象徴する存在です。
彼のラップは「混ざり合うこと」をテーマにしたこの楽曲において、異なる個性が一つの皿に共存するというメッセージを補強します。
彼のパートでは、LE SSERAFIMのメンバーが築いたリズムに“跳ねるフロー”を加え、まるで料理の最後に香草を振りかけるようなアクセントになっています。
このコラボは、K-POPの新しい“味覚”の発見とも言えるでしょう。
4. ダンス・ビジュアルの美学
MVとステージパフォーマンスでは、「混沌と整然」「シンプルと過剰」の対比が見事に演出されています。
• 衣装:パステルカラーのシェフコート×ストリートウェア
• ダンス:パスタを巻き取るような手の動き、“ソースをまき散らす”ようなスピン
• セット:巨大キッチン、食卓、スパゲッティの海
全てが“完璧を求めないアート”として設計され、視覚的にも強烈なインパクトを残します。
LE SSERAFIMはここでも、「失敗を恐れず自分を表現する」という姿勢を貫いています。
5. 歌詞から見える“女性像のアップデート
本作の歌詞は、自己肯定と再定義をテーマにしています。
従来の“完璧・努力・美しさ”を押し付ける構図から離れ、混ざり合い・曖昧さ・個性を肯定する方向へ。
たとえば「ぐちゃぐちゃでも、それが私」「味見してみて、後悔しないから」というフレーズには、
“挑戦し続ける女性像”というLE SSERAFIMらしさが滲みます。
6. グローバルな視点での意義
この曲は、韓国国内よりも海外ファンダムを強く意識して作られています。
英語のリズムを生かしたリリック構成、ユーモラスな映像、TikTokで拡散されやすい振付など、
“視聴体験としての音楽”を前提に設計されたトラックです。
また、「食」をテーマにしたことで、文化を超えて共感できる普遍性を手に入れています。
それはLE SSERAFIMが掲げる“FEARLESS(恐れない)”というキーワードの、次なる進化形とも言えるでしょう。
最後に
「SPAGHETTI」は、ただの新曲ではなく、
LE SSERAFIMというブランドが「強さ」から「自由」へと移行する転換点です。
笑いながら、踊りながら、自分を好きになる。
そんなポップカルチャーの新しい形を、彼女たちは見せてくれました。

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